2023年の夏、僕は1台の自転車を買った。
電動アシスト自転車で、約37万円。
ただ、その約37万円を、現金で払ったわけではない。
クレジットカードのリボ払いだった。
借金1,100万円を抱えている人間が、また、自分から借金をした。
でも、振り返ってみれば、今までの借金とは違った。
その話を、書こうと思う。
新しい自転車を買う3ヶ月前、僕は約5万円の中古自転車を買っていた。その自転車との出会いで、フードデリバリーの売上が大きく伸びたことは、以前の記事に書いた。
→ 3月4.3万→4月22万。フードデリバリーの売上を約5倍にした、中古の電動アシスト自転車
これは、その話の続きでもある。
約5万円の中古自転車から、約37万円の新品の自転車へ。
なぜ、たった3ヶ月で、値段が7倍以上の自転車に乗り換えたのか。なぜ、現金ではなく、借金を選んだのか。
順番に、書いていく。
第1章:5万円の中古自転車で、118万円を稼いだ
まず、約5万円の中古自転車の話から始めたい。
僕がその自転車を買ったのは、2023年の4月だった。50,460円。消費税と防犯登録料を含めた金額だ。
その自転車で、僕は4月から、新しい自転車に乗り換えるまでの約4ヶ月、フードデリバリーの配達を続けた。
その約4ヶ月で、約5万円の自転車を使って、約118万円を稼いだ。
そして、新しい自転車を買ったあと、これまで使っていた中古の自転車を手放すことにする。
個人間で物を売り買いできるサービスを使って、別の人に直接売却。
売れた金額は、5万円。あとから買い足したバッテリーも、一緒に付けて、その値段だった。
約5万円で買った自転車は、5万円で売れた。
ただ、この金額には、22,000円で買い足した追加分のバッテリーも含まれている。
なので、この4ヶ月間で実質的に負担したのは、追加のバッテリー代と、修理費だけといえる。
約5万円の中古自転車は、4ヶ月のあいだ僕と一緒に約118万円を稼ぎ、そして、次の人のもとへ旅立っていった。
第2章:3ヶ月で、7回修理に出した
ここまで書くと、「うまくいっていたのに、なぜ買い替えたのか」と思われるかもしれない。
理由は、はっきりしている。
約5万円の中古自転車では、もう、続けられなくなっていたからだ。
その自転車は、電動アシスト付きのスポーツタイプだった。ただ、エントリーモデル、つまりは入門的な機種だった。
もともとは、通勤や通学で使うことを想定して作られた自転車。
それを僕は、フードデリバリーで使った。
毎日、配達バッグを背負って、何時間も走り回る。メーカーが想定していた使い方を、はるかに超えて、僕はその自転車を酷使していた。
自転車のほうも、悲鳴をあげた。
4月から6月までの3ヶ月で、僕はこの自転車を、7回も修理に出した。
修理費の総額は、66,949円。
買った金額の、50,460円を、超えてしまっていた。
それから、バッテリーの問題もあった。
もとから付いていたバッテリーは、3〜4時間ほどしか持たなかった。
僕は購入から2週間後に、容量が倍ある中古のバッテリーを買い足した。それでも、土日に一日中稼働するときは、途中でバッテリーを交換しないと走りきれなかった。
修理のたびに、配達ができない時間が生まれる。
バッテリーが切れれば、そこで稼働は止まる。
約5万円の中古自転車は、よく働いてくれた。でも、僕の稼ぎ方に、もうついていけなくなっていた。
第3章:「もう少し、いい自転車を」
買い替えを考えはじめたのは、2023年の6月あたりだったと思う。
はっきりと「この日に決めた」という瞬間は、覚えていない。
修理に出すたび、バッテリーが切れるたび、少しずつ、その考えは固まっていった。
何度目かの修理で自転車屋に持って行った時、店員さんからアドバイスをもらった。配達しているところを、見かけていたらしい。
今乗っている自転車はエントリーモデルで、通勤や通学での使用を想定していること。
フードデリバリーで使うなら、自転車のグレードを上げた方がいい、とのことだった。
この時、自分が買った自転車が入門的な機種だったと、初めて知った。
そのアドバイスが、背中を押した、というわけではない。
ただ、自分でも薄々感じていたことが、自転車のプロから言われることで、明確になった。
グレードを上げて、長距離を走っても壊れにくく、バッテリーも長時間持つ自転車に、買い替えよう。
そう、決意した。
第4章:はじめは、30万円未満で考えていた
買い替えると決めて、すぐに「約37万円の自転車」にたどり着いたわけではない。
最初に僕が考えていたのは、もっと安い自転車だった。
理由は、減価償却にあった。
仕事道具を購入するとき、30万円を超えると、減価償却という、何年かに分けて経費にしていく会計処理が必要らしい。※
その処理が、なんとなく面倒に思えた。
だから僕は、「30万円未満」という条件で、新しい自転車を探し始めた。
いつもの自転車屋に、ちょうど、展示品特価で出ているスポーツタイプの自転車があった。グレードは、今乗っている自転車より上だった。それでいて、30万円を切っていた。
これにしようかと、半分くらい、気持ちは決まりかけていた。
ただ、その自転車には、ひとつ気になる点があった。
展示品とはいえ新品で、グレードは高いけれど、今乗っている中古自転車より、さらに古い年式だった。
僕は、「30万円未満」という条件にこだわり、年式の古い自転車を選ぼうとしていた。
第5章:30万円という条件を、自分で外した
そんなとき、自転車屋の店員さんから、僕がそのとき乗っていた自転車と同じメーカーで、新しいモデルが発売されたと聞いた。
すぐに、カタログをもらった。
家に帰ってから、スペックを、じっくり見た。
変速の段数も、バッテリーの容量も、走れる距離も、今の自転車から、進化していた。
ただ、その新モデルは、「30万円未満」という条件を超えた価格だった。
だから、一度考え直すことにした。
「減価償却が面倒だから30万円未満」というのは、本当に正しい判断なのだろうか。
減価償却についてはなんとなくしか知らなかったから、調べてみた。
自転車の法定耐用年数は、2年。当時から使っていた会計ソフトを使えば、自分でも処理できそうだった。
「減価償却の処理をしなくていい、30万円未満の自転車にする」
それは、慎重な判断のように見えて、その実、「面倒くさそう」という印象だけで決めていただけだった。
調べて、理解すれば、30万円を超える自転車を選んでもいい。
僕は、自分で付けた条件を、自分で外すことにした。
最終的に、選んだのは、年式の古い特価品ではなく、新しいモデルのほうだった。
第6章:リボ払いを、選んだ理由
新しいモデルを買うことに決めた。
次に向き合わなければならなかったのは、支払いの問題だった。
その自転車の金額は、約37万円。
正直に言うと、約37万円を、現金一括で払えるだけのお金は、僕の手元になかった。
無理をすれば、かき集められたかもしれない。でも、そうすれば、そのあとの生活費や、借金の返済で、行き詰まる可能性が高かった。
現金一括は、僕にとって、現実的な選択肢ではなかった。
この時、僕に残された選択肢は、クレジットカードのリボ払いしかなかった。
このリボ払いの金利は、年14.9%。以前書いた、新生活の50万円と、同じ金利だった。ただ、返済の方式は違っていた。
→ 新生活スタートで借りた50万。返済総額はいくらになると思いますか
借金1,100万円で苦しんできた僕が、また、自分の意思で、借金を増やそうとしていた。
ここで、補足しておきたいことがある。このリボ払いに使ったカードは、副業用に用意して、プライベートと別管理していたカードだった。なので「生活の借金1,100万円」には含めていない。
それでも、リボ払いである以上、これも借金には変わらない。
そのことから、目を逸らさずにいたいと思った。
第7章:公庫融資を、検討してみた
リボ払いにすると決めたあとも、僕はもう少し、考えていた。
リボ払いの金利は、年14.9%。決して、安くはない。
もっと利息の負担が軽い、別の借り方はないだろうか。
そう思って、僕が検討したのが、日本政策金融公庫からの融資だった。
副業とはいえ、僕はフードデリバリーを事業として続けている。事業のための借り入れなら、公庫から融資を受けられるかもしれない。融資なら、リボ払いよりずっと低い金利で借りられるはずだ。
僕は、実際に公庫に電話をかけた。
担当の方に、自分の状況を説明し、いろいろと質問をした。
担当の方は、丁寧に答えてくれた。
ただ、ひとつ、どうにもならない問題があった。
時間だ。
融資を申し込んでから、実際に融資がされるまで、1ヶ月半ほどかかる、と言われた。
僕は、すでに自転車を注文していた。
1ヶ月半も手続きにかかるのでは、納車までに、とても間に合わない。
このときは、公庫融資をあきらめた。
次、自転車を買うときは、手続きにかかる期間も計算して、融資で購入しようと思った。
第8章:注文した日
自転車を注文したのは、2023年7月19日。
このとき、手付金として、10,000円を払った。
注文の手続きをしているあいだ、ドキドキしていたことを、今でも覚えている。
返済の計画は、立てていた。
購入する前に、シミュレーションもしていた。返済方式は元金定額。月々の元金返済額は25,000円で、これに利息が加わる。だいたい15ヶ月で返し終わって、利息も含めた返済の総額は、約40万円になる。
直近の売上も、追い風だった。
4月の売上は約22万円。5月は約28万円。6月は約32万円。7月も、前月を上回るペースで伸びていた。
この売上の伸びなら、月々の返済も、無理なく続けていけそうだった。
数字の上では、「大丈夫だ」と思えるだけの根拠があった。
それでも。
それなりの金額の買い物。しかも、リボ払いという借金だ。
不安が、完全に消えることは、なかった。
「大丈夫だと思う」と「絶対に大丈夫だ」の間には、埋めることの出来ない距離がある。世の中には「絶対」はないのだから。その埋まらない距離を飲み込んで、進むしかない。
第9章:待っていた18日間と、納車の日
自転車の納車予定日は、8月6日。注文から、18日後だった。
新しい自転車が届くのが、待ち遠しかった。
不安もある。
でも、それ以上に、早く乗ってみたい、という気持ちが強い。
納車日まで、中古自転車で、ソワソワしながら配達を続けていた。
そして、2023年8月6日。
新しい自転車が、納車された。
ここで、僕が実際に支払った金額のことを、書いておきたい。
注文した日に、手付金として10,000円を払った。納車の時、残りの354,200円を支払う。手付金と合わせて、合計364,200円。消費税と防犯登録料を含めた金額。
これが、僕がこの自転車に実際に支払った金額だ。
支払いを済ませ、いよいよ、新しい自転車と対面。
現物を、はじめて見る。
カタログの写真では、何度も見ていた。
でも、実物を目の前にしたときの感動は、写真で見るのとは、全然別物。
デザインも、色も、思っていた以上だった。
乗ってみて、すぐに今までの自転車との違いを実感する。
変速は細かく、ブレーキはよく効き、バッテリーは前のものとは、別ものだった。
「これからは、この自転車で配達を続けていく」
そう、思った。
第10章:約37万円で、買ったもの
新しい自転車に乗り換えて、僕の稼ぎは、どう変わったか。
正直に言うと、1件あたりの配達にかかる時間や、配達ごとの売上は、そこまで大きくは変わらなかった。
「約37万円の自転車に乗り換えたら、売上が一気に伸びた」
そういう話では、なかった。
そもそも、僕の売上は、この自転車を買う前から、伸びていた。約5万円の中古自転車のままでも、4月から8月にかけて、売上は右肩上がりだった。
だから、約37万円の自転車を買っても、売上は大して変わらなかった。
でも、新しい自転車になって修理の回数が減った。
約5万円の中古自転車は、3ヶ月で7回、修理に出した。
新しい自転車は、買った年の修理は、1回だった。
翌年は、6回。グレードが上がったぶん、部品の値段は高くなった。修理費がゼロになったわけではない。それでも、「壊れて配達ができない」という時間は、確実に減った。
それから、土日に一日中走っても、途中でバッテリーを交換せずに、走りきれるようになった。
修理で止まらない。バッテリー切れで止まらない。
止まらずに、走り続けられる。
修理回数が減り、バッテリーも長時間もつようになり、効率が上がった。
僕は、約37万円で自転車だけではなく、稼ぎ続ける土台を買った。
第11章:2年で、26,000キロ
その自転車を、僕は約2年間、主力として使い続けた。
2023年の8月から、2025年の7月まで。
この自転車には、走った距離を記録する機能が付いていた。
計算してみると、2年間で走った距離は、約26,000キロだった。
東京と大阪の間を、約26往復できる距離だ。
その距離を、僕はこの自転車と一緒に、配達をして、稼いだ。
約37万円の自転車を、買うことが正解だったかどうか。
それを証明するのは、この走った距離なのだと思う。これだけ走った分、稼ぎも積み重なった。
2年間で、走行距離約26,000キロ、売上約490万円。
これが新しい自転車で走った距離と、稼いだ額だ。
そして、2025年の7月、僕は、次の自転車を買う。
このとき、ひとつの区切りがついた。
自転車購入のために組んだリボ払いを、ちょうど返し終えたのだ。
正直に書いておくと、リボの返済は、当初計画の15ヶ月で返済できなかった。
途中で、副業の所得税や住民税の支払いにも、同じカードのリボ払いを使ってしまったから。
なので、それも含めて、すべてを返し終えたのが、2年後の2025年7月になった。
「投資のための借金だから大丈夫」と、そう簡単に言いきれるほど、現実は単純ではなかった。
返済は計画通りにいかなかったけども、2年で、リボは完済。
そして、2年間を共に走り抜いたこの自転車は、僕の手を離れ、子供のもとへ行った。
→ 日本政策金融公庫から47万円の融資を受けて、新しい自転車を買った話
約5万円の中古自転車から、約37万円の新しい自転車へ。
この記事で僕が伝えたいのは、「いい自転車を買えば稼げる」という単純な話ではない。
稼ぐためには、たしかに、良い道具がいる。
でも、「高ければいい」というわけではない。
大事なのは、自分の今の状況に合った、最適なものを選ぶことだ。
もし、僕が2023年の4月の時点で、いきなり約37万円の自転車を買っていたら、それはリスクの高い買い物だったと思う。
その時点の僕は、まだ、フードデリバリーで安定して稼げるかどうか、自分でも分かっていなかった。
僕はまず、約5万円の中古自転車で試した。
この道具で、自分は売上を上げられる。それを確認した。
その実証があったことで、続けて稼いでいくために、もう一段、良い自転車へと進んだ。
順番が、あったのだと思う。
それから、お金の話。
本当は、自転車のような道具は、現金一括で買えるのが、いちばんいい。
借金をすれば、利息がかかる。利息は、払わなくていいなら、払わないほうがいい。
僕の場合は、現金がないタイミングで、借金という手段を選んだ。それが正しかったかどうかは、人によると思う。ただ、僕には、その手段を選ぶしかなかった。
それでも、もし借りるなら——しっかりとシミュレーションをして、返済計画を立てる必要がある。
「稼げているから、大丈夫だろう」という勢いだけで借りるのではなく、数字で、確かめておく。
僕は、その計画を立てた。それでも、現実は計画どおりにはいかなかった。
だからこそ、計画を立てておくことには、意味がある。計画があったから、どこがズレたのかが分かった。
これらは、僕が約37万円の自転車を買って、学んだことだった。
この自転車は、2年間、稼ぎ続ける土台になってくれた。
良い道具は、必要だ。
でも、それは、身の丈に合っていてこそ、力になる。
複利の奴隷から、成り上がるまで。
※:これは2023年当時の僕の理解。実際には少額減価償却資産の特例などもあり、状況によって処理は異なる。2026年の税制改正(令和8年度税制改正)で、特例の基準額は30万円未満から40万円未満に引き上げられた(2026年4月1日以降取得分)。詳細は国税庁・中小企業庁の公表情報で確認できる。読者が経費処理する際は、最新の税制を確認してほしい。



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