前に書いた記事では、「2023年2月末、Uber Eatsの配達員として登録した」と書いた。
でも、正確には、登録したのは2023年2月14日だ。
そこから初稼働までは、約1ヶ月かかった。
初稼働は、2023年3月12日。
1日の売上は、600円だった。
借金1,100万円に対して、600円。
あまりに小さい数字。
でも、複利の奴隷から成り上がる希望が見えた、大きな600円だった。
今日は、その日の話を書いていく。
第1章:せどりの限界と、次の副業探し
Uber Eatsを始める前、僕はせどりに挑戦していた。
期間は、約1年4ヶ月。
少しずつ感覚を掴んで、少しは利益も出ていた。
でも、続けられなかった。
理由は、キャッシュフローだった。
仕入れの支払いは、すぐ来る。
売れなければ、お金は入らない。
売れても、入金は数週間後。
この時間のズレを埋めるには、資金力が必要だった。
借金を抱えた状態の僕には、そのズレを埋める余力がなかった。
仕入れにお金を回すと、返済が進まない。
返済を優先すると、仕入れができない。
加えて、不良在庫も抱えていた。
仕入れた商品が売れないと、お金にならない。
その分の資金が、動かせなくなる。
(この話は、いずれ別の記事で書く予定だ。)
せどりは、いったん休止することにした。
次に探していたのは、別の形の副業だった。
仕入れで資金を寝かせる必要がない。
シンプルに、働いた分が、借金返済の原資になる。
そういう副業は、ないだろうか。
そう考えていた時、ふとUber Eatsのことが頭に浮かんだ。
コロナ禍のニュースで、名前は知っていた。
利用者として、何度か注文したこともあった。
でも、「自分が配達する側になる」という発想は、それまで一度も持ったことがなかった。
利用者から、配達員へ。
立場が逆転した瞬間だった。
第2章:2023年2月14日、スマホで登録した夜
2023年2月14日の夜、僕は自宅のPCでUber Eatsの配達員登録について調べていた。
静かな時間だった。
必要な書類は、運転免許証の写真だけ。
登録自体は、スマホのアプリから行う。
思っていたより、手続きは少なかった。
スマホでアプリを開いて、免許証の写真を撮り、送信した。
登録完了後、配達と交通のルールについての動画を視聴。
その勢いのまま、Uber Eatsの公式ショップで、ヘルメットと配達バッグを注文した。
合計は、7,850円。
稼働可能になったのは、2月17日。登録から3日後。
ヘルメットとバッグが届いたのは、2月21日頃。注文から約1週間後だった。
ヘルメットと配達バッグの他に、もう一つ必要なものがあった。
自転車だ。
初稼働で使った自転車は、自分で買ったものではなかった。
5年ほど前、知り合いが引越しのタイミングで、「使わないから」と譲ってくれた中古の自転車だった。
譲り受けてから、あまり使う機会もなく、自宅の自転車置き場に置いたまま。
屋根がなかったので、日差しと雨を5年浴び続け、自転車はボロボロになっていた。
それでも、走ることはできた。
もし、この自転車がなかったら、僕はUber Eatsを始められなかったかもしれない。
自転車を新しく買うとなれば、初期投資は数万円単位で増える。
借金1,100万を抱えた僕にとって、その出費が、最初の一歩を踏みとどまらせる理由になっていた可能性は、十分にあった。
ヘルメットと配達バッグの7,850円なら、まだ踏み出せる金額だった。
でも、これに自転車の数万円が加わっていたら、結論は違っていたかもしれない。
ボロボロの自転車、ヘルメット、配達バッグ。
最低限必要な物は揃った。
その時の僕は、確かにやる気があった。
「これで返済を進められるかもしれない」
そう思っていた。
でも、この後、3週間が過ぎていく。
第3章:準備完了から3週間、動けなかった理由
稼働可能になった2月17日から、初稼働の3月12日まで、約3週間の空白がある。
アプリは登録の時にインストール済み。
最低限必要な自転車、ヘルメット、配達バッグも、手元にあり、いつでも稼働できる準備は整っていた。
でも、動けなかった。
理由は、3つあった。
1つ目は、熱量の減衰だった。
登録した夜、僕は確かにやる気に満ちていた。
でも、稼働可能になるまでの3日、物品が届くまでの1週間。
待っている間に、少しずつ、熱が冷めていった。
2つ目は、考えすぎだった。
「本当に自分にできるだろうか」
「本当にこれで稼げるだろうか」
やる前から、起きてもいないことを先回りして悩んでいた。
3つ目は、本業の繁忙期だった。
年度末で、仕事が忙しかった。
「今は本業に集中しよう」
動かないことの、もっともらしい言い訳になっていた。
物品が届いた時、「これでいつでも始められる」と思い、少しだけ熱が戻った。
でも、その熱も、実際に配達する直前までに、また冷めていった。
第4章:支払いが背中を押した、3月12日の夜
3月12日、日曜日。
その日、僕は「今日やるぞ」と行動を開始した。
前々から決めていたわけじゃなかった。
当日、急に思い立った。
背中を押したのは、高尚な決意じゃなかった。
月末から翌月10日にかけて集中する、クレジットカードとカードローンの支払いが原因だった。
このままだと、今後厳しい。
このままでは、何も変わらない。
頭で考えるより先に、身体が動いた。
家を出たのは、夜10時過ぎ。
夜のピークタイムは、もう過ぎていた。
依頼は少ないだろうし、落ち着いて始められる。
そう思って、この時間を選んだ。
成功を狙うより、失敗しても目立たない時間帯を選んだ。
それが、僕の初稼働の始まり方だった。
第5章:初配達、300円の衝撃
アプリを開いて、オンラインにする。
Uber Eatsのアプリには、ヒートマップという機能がある。
需要が高そうなエリアに色がついて表示される。
近くの飲食店が、マップ上に見えていた。
その飲食店の近くまで自転車で移動して、邪魔にならなさそうな場所で待機した。
最初の依頼が来るまで、10分か20分くらいあったと思う。
正確な時間はわからない。
当初は、稼働時間の記録もしていなかった。
待っている間、頭の中で同じ言葉が繰り返されていた。
「本当に配達依頼が来るんだろうか」
「本当にこれで稼げるんだろうか」
やがて、アプリの通知音が鳴った。
最初の依頼が、表示された。
店舗は、牛丼屋。
配達先は、そこから自転車で数分の距離。
商品を受け取り、お客様の住所へ向かった。
インターホンを鳴らして、対面でお客様へ商品を手渡した。
その後、配達完了のボタンを押す。
アプリの画面に、配達報酬が表示された。
300円。
当時のUber Eatsの、最低報酬額だった。
第6章:2件目、置き配に焦った
1件目の配達を終えて、近くで待機していると、2件目の依頼が来た。
次の店舗は、コンビニ。
ここでも商品を受け取り、配達先へ向かった。
でも、1件目と違っていた。
配達先での受け取り方法が、置き配だった。
1件目の対面に慣れかけていた僕は、少し焦った。
どこに置けばいいのか。
写真はどうやって撮るのか。
アプリの指示を、一つずつ確認した。
指定された場所に商品を置き、アプリで写真を撮影。
配達完了のボタンを押す。
報酬は、また300円。
その日の売上は、600円だった。
稼働時間は、約1時間。
配達は、2件。
1件目は対面、2件目は置き配。
同じUber Eatsでも、配達ごとに状況は違う。
初日から、それを教えられた。
第7章:600円の帰り道
夜11時頃、家に帰った。
2件しか配達していなかったから、肉体的な疲労はあまりなかった。
でも、緊張していたこともあって、精神的には疲れていた。
少し稼げるかもしれない。
そう思った。
ただ、借金1,100万を返済していくには、あまりに長い道のりだった。
深夜0時頃、布団に入った。
あまりに小さい、600円。
でも、複利の奴隷から成り上がる希望が見えた、大きな600円だった。
かすかな期待と、大変さの実感。
その両方を抱えて、僕はその夜を終えた。
第8章:初月の結果、売上43,202円
3月12日に初稼働してから、3月末まで。
約2週間半のあいだに、僕は少しずつ稼働日を増やしていった。
3月の最終的な数字は、こうなった。
- 稼働日数:10日
- 配達回数:122回
- オンライン時間:39時間57分
- 売上:43,202円
1日あたりの平均売上は、約4,320円。
1件あたりの平均報酬は、約354円。
時給換算すると、約1,080円。
初期投資の7,850円は、1ヶ月で約5.5倍に戻ってきた。
初日の売上は600円だったが、最高で6,767円売り上げた日もあった。
アプリの操作も、地理も、待機の仕方も、少しずつ慣れていった。
宅配ピザ屋でアルバイトをしていた経験も、意外と役に立っていた。
そして、初日の夜の不安は、解消されていった。
本当に、配達依頼が来る。
本当に、稼げる。
稼いだ分から経費を引いた額が、そのまま借金返済に回せる。
僕が探していた、シンプルな副業だった。
結び:たった600円から始まった
初稼働の売上は、600円だった。
借金1,100万円に対して、たった600円。
あまりに小さい数字。
でも、複利の奴隷から成り上がる希望が見えた、大きな600円だった。
あれから3年が経った。
副業の売上は、2023年269万円、2024年234万円、2025年255万円。
3年の合計は、約758万円になった。
でも、すべての始まりは、あの夜の600円だ。
もし、今この記事を読んでいるあなたが、僕と同じように動けないでいるのなら。
「本当に自分にできるだろうか」と、頭で考え続けているなら。
僕の言えることは、一つだけだ。
初日の売上は、600円でもいい。
まず、動き出すこと。
そこから、少しずつ積み上げていく。
複利の奴隷から、成り上がるまで。

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