想像してみてほしい、一人の新社会人を。
22歳、4月。
大学を卒業して、新生活が始まる。
部屋を借りて、家電を揃えて、家具を選んで。
貯金じゃ足りなかった。
だから、カードローンで借りた。
金額は、50万円。
年利14.9%、月々の返済は8,000円。
「無理なく返せる」と思った。
ここで問題です。
総額で、いくら返すことになると思いますか。
完済まで、何年かかると思いますか。
自分なりの答えを出してから、読み進めてみてほしい。
第1章:新生活のスタートに、50万円
話を、詳しく見ていく。
配属先は地方都市。
実家を離れて、一人暮らしが始まる。
引っ越しの準備を始めて、気づいた。
一人暮らしには、思った以上にお金がかかる。
家電が必要だった。
冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、テレビ、炊飯器。
最低限のものでも、12万円ほどかかった。
家具も必要だった。
ベッド、机、椅子、カーテン、照明。
こちらも、6万円ほどかかった。
家賃7万円の部屋を借りるのに、敷金・礼金・仲介手数料・前家賃で、35万円が必要だった。
引っ越し業者に頼めば、4万円。
それから、スーツや革靴、仕事用のカバン、日用品。
細々としたもので、さらに8万円ほど。
合計すると、65万円を超えていた。
さらに、初任給が入るまでは、1ヶ月以上ある。
その間の生活費も、8万円ほど必要だった。
合わせると、必要な金額は70万円を超えていた。
大学卒業時の貯金は、約20万円。
まったく足りなかった。
親には、あまり頼りたくなかった。
頼るにしても、自分で何とかできる範囲で、と思った。
そこで、カードローンを使うことにした。
借入額は、50万円。
第2章:カードローン50万の契約内容
カードローンの契約内容を、改めて見てみる。
金利は、年14.9%。
返済方式は、残高スライドリボルビング払い(以下、残高スライドリボ)。
月々の返済額には、元本の返済分と利息の支払い分の両方が含まれている。
言葉だけでは、わかりにくい。
順番に、見ていく。
年14.9%
1年間で、残高に対して14.9%の利息がかかる。
1ヶ月あたりに直すと、約1.24%。
50万円を借りると、1ヶ月目の利息は約6,208円。
残高スライドリボ
返済額が、借入残高に応じて変わる仕組みだ。
残高が多いほど、月々の返済額も多い。
返済が進んで残高が減ると、月々の返済額も下がっていく。
このカードローンの場合、下の表のように残高に応じて月々の返済額が変わる。
| 残高 | 月々の返済額 |
|---|---|
| 40万円超〜50万円 | 8,000円 |
| 20万円超〜40万円以下 | 6,000円 |
| 10万円超〜20万円以下 | 4,000円 |
| 10万円以下 | 2,000円 |
返済が進むにつれて、月々の負担は軽くなっていく仕組みだ。
返済額の中身
月々の返済額には、元本の返済分と利息の支払い分が、両方含まれている。
毎月、その2つを合わせた金額を払う。
以上が、50万円の借入に対する契約内容だ。
月々8,000円。
無理なく払える金額だと思った。
第3章:1ヶ月目の返済、8,000円の中身
1ヶ月目の返済日が来た。
月々の返済額は、8,000円。
この8,000円の中身を、見ていく。
月々の返済額は、8,000円。
このうち、まず利息の6,208円が支払いに充てられる。
残りの1,792円が、元本の返済に回る。
・返済額:8,000円
・うち利息:6,208円(77.6%)
・うち元本:1,792円(22.4%)
月8,000円を払った結果、元本は1,792円だけ減った。
借入残高は、498,208円になった。
50万円借りて、1ヶ月後の残高が、49万8,208円。
1ヶ月で、約1,800円しか減っていない。
違和感を覚えるかもしれない。
月に8,000円も払っているのに、なぜ元本は2,000円弱しか減らないのか。
答えは、利息だ。
年14.9%という金利の場合、50万円の借入残高に対して、1ヶ月の利息は約6,200円。
月々8,000円の返済額のうち、約8割が利息として消える。
残りの約2割だけが、元本の返済に回る。
2ヶ月目も、ほぼ同じ。
残高がまだ49万8,208円あるので、利息もほぼ同じ。
元本は、ほんの少ししか減らない。
このペースで、50万円を少しずつ返していくことになる。
第4章:借入50万が、返済総額128万に
借入50万円が、返済総額128万円になる。
完済までには、約22年3ヶ月かかる。
これが、最初の問題の2つの答えだ。
数字を見ていく。
・完済までの期間:約22年3ヶ月
・総返済額:約128万円
・うち利息:約78万円
・元本:50万円
50万円を借りて、約22年3ヶ月かけて、約128万円を返す。
利息だけで、約78万円。
借りた元本の、約1.56倍の利息を、払うことになる。
もう一度、並べてみる。
- 借りたお金:50万円
- 返すお金:約128万円
差額の約78万円は、全て利息だ。
返済は、段階的に進んでいく。
下の表のように、残高が減るにつれて月々の返済額も少しずつ下がっていく。
| 期間 | 月返済額 | 累計期間 |
|---|---|---|
| 最初の約3年7ヶ月 | 8,000円 | 〜3年7ヶ月 |
| 次の約8年3ヶ月 | 6,000円 | 〜11年10ヶ月 |
| 次の約3年11ヶ月 | 4,000円 | 〜15年9ヶ月 |
| 最後の約6年6ヶ月 | 2,000円 | 〜22年3ヶ月 |
返済額が下がるのはありがたい。
ただ、その「優しさ」には、代償がある。
月々の返済額が下がるということは、そのぶん元本の返済ペースも遅くなるということだ。
結果として、完済までに約22年3ヶ月かかり、総額約128万円を支払うことになる。
新社会人の22歳で借りたとしたら、完済するのは44歳。
20代と30代の全てを、50万円の返済のために使うことになる。
ちなみに、これは追加で借り入れない場合の計算だ。
途中で追加借入をすれば、期間も総額も、もっと膨らむことになる。
これが、残高スライドリボの現実だ。
月々の返済額は少なく、負担も軽い。
だから、無理なく払える。
ただ、その負担の軽さの正体は、元本がほとんど減らないという現実だった。
そして、長い年月の利息の積み重ねだった。
月々の負担が軽いことと、借金が早く終わることは、別の話だ。
第5章:そして、複利の奴隷に
もう一度、1ヶ月目の内訳を思い出してほしい。
月々の返済額8,000円のうち、
6,208円は、利息として消えた。
元本の返済に回ったのは、1,792円だけ。
これを、別の言葉で言い換えてみる。
月々の8,000円のうち、
大半は複利という名の主人へ、支払っている。
払っても、払っても、元本はなかなか減らない。
減らないから、次の月も、同じ構造の支払いが続く。
利息を支払い続けている限り、奴隷の身分から抜け出せない。
これが、複利の奴隷という状態だ。
主人は、黙って、毎月、利息を受け取る。
奴隷は、黙って、毎月、利息を支払う。
約22年3ヶ月、その関係が続く。
借りた50万円に対して、78万円を、主人に利息として支払う。
元本の、1.56倍。
月々の負担は軽い。
だから、奴隷であることにさえ、気づきにくい。
これが、リボ払いという仕組みの本質だ。
そして、この構造に閉じ込められた人間が、実際にいる。
第6章:10数年かけて、約700万に
この構造に閉じ込められていたのは、僕だ。
始まりは、新生活のカードローンではなかった。
それでも、月々の返済が少なく、負担が軽いという「親切」に引き寄せられた道筋は、
前章までに書いたものと、同じだった。
30代から40代にかけて、10数年。
クレジットカードのリボ払いと、カードローン。
気づいた時には、約700万円の借金になっていた。
最初の1件は、大した金額ではなかった。
月々の返済額も、無理なく払える範囲だった。
「これくらいなら大丈夫」と思いながら、少しずつ積み上がっていった。
借金の構造は、この記事の前半で示した通りだ。
月々の支払いの大半が、利息として消える。
元本はなかなか減らない。
返済が続いていたのに、新しい借入も重ねたことで、
残高は増え続けていった。
これとは別に、親からの借金もある。
こちらは約400万円。厚意で利息はついていないが、
僕の無関心が生んだ、もう一つの借金だ。
合計すると、約1,100万円。
この1,100万円が、どうやって積み上がったのか。
詳しい経緯は、別の記事に書いた。
第7章:親切な仕組みと、その代償
リボ払いには、確かにメリットがある。
月々の返済額が、残高に応じて決まる。
しかも、残高が減れば返済額も下がる。
家計の状況に合わせて、毎月の負担をコントロールしやすい。
急な出費があっても、返済計画を立てやすい。
この仕組み自体は、借り手にとって「親切」に見える。
月々の負担を抑えたい人にとって、頼もしい選択肢だ。
ただ、その親切には、代償がある。
月々の返済額を低く抑えるということは、
そのぶん元本の返済ペースも遅くなるということだ。
元本が減らない期間が長くなれば、
その間もずっと、残高に対して利息がかかり続ける。
結果として:
- 返済期間は、数十年単位になる
- 総返済額は、元本の2倍以上になることもある
- 毎月払っているのに、「借りている状態」が終わらない
月々の負担は軽い。
だが、返済期間の長さと、利息の重さという代償を支払うことになる。
そして、もう一つの問題がある。
月々の返済額が下がっていく仕組みは、
「もう少し借りても大丈夫かもしれない」という気持ちを生みやすい。
最初は50万円だったのが、70万円になり、100万円になる。
気づけば、当初の借入額の何倍にも膨らんでいる。
月々の負担の軽さは、さらなる借金が可能ということではない。
ここを見誤ると、複利の奴隷の状態が、
何年も、何十年も続くことになる。
第8章:あなたへ、伝えておきたいこと
ここまで読んでくれた、あなたへ。
伝えておきたいことが、3つある。
まずは、今すでに借りているあなたへ
明細を、見てほしい。
月々の返済額のうち、いくらが利息で、いくらが元本に回っているか。
その内訳を、一度だけでいいから、確かめてほしい。
気づくことが、最初の一歩になる。
数字を知れば、次の行動が見えてくる。
少しでも多く元本を返す方法はないか、返済計画を見直せないか。
考えるきっかけは、明細の中にある。
次に、これから借りようとしているあなたへ
借りる前に、一度だけシミュレーションしてほしい。
完済まで何ヶ月かかるのか。
総額でいくら返すことになるのか。
その2つの数字を、契約前に確かめてほしい。
多くのカードローンやクレジットカード会社のサイトに、
返済シミュレーションの機能がある。
借入希望額と金利を入れるだけで、
何年かかって、いくら返すのかが、すぐに出る。
今ならChatGPTなどのAIに計算を手伝ってもらうのも良いかもしれない。
ただし、AIの回答は必ず自分で確認してほしい。
月々の返済額の軽さだけを見て判断しないでほしい。
その軽さの代償に、何があるのかを知ってから、
決めてほしい。
最後に、これから社会に出るあなたへ
40代の僕が、伝えられることは多くない。
ただ、10数年かけて気づいたことを、
先に伝えておきたかった。
これが、その全部だ。
結び:複利の奴隷から、成り上がるまで
僕はまだ奴隷の身分から抜け出せていない。
でも、抜け出すための歩みは、止めていない。
毎月、副業で稼いで返済している。
借金が増えてしまうこともあったが、この3年で見れば、少しずつ減ってきた。
この記事を書いたのは、
同じ場所に立つ人、あるいは立ちそうな人に、
気づいてほしかったからだ。
気づくことは、最初の一歩になる。
そこから先は、それぞれのペースで進めばいい。
僕は、今日、少しだけ進んだ。
明日も、また少しだけ進む。
時には、後退することもあるかもしれない。
でも、進むことはやめない。
複利の奴隷から、成り上がるまで。
その道を、一緒に歩けたらと思う。
※シミュレーション前提に関する注記
本記事の金利・返済額・完済期間・総返済額は、一般的なカードローンの条件を想定したシミュレーション結果です。
実際の借入条件は各金融機関の契約内容によって異なります。
借入を検討される場合は、必ず契約書面を確認し、各金融機関の返済シミュレーションをご自身でご利用ください。
本記事は個人の体験と一般的な仕組みの解説であり、特定の金融商品を推奨・批判するものではありません。


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