フードデリバリーを始めたばかりの立ち回り。効率は後でいい

フードデリバリーを始めたばかりの頃の立ち回り。効率は後でいい フードデリバリー

フードデリバリーの配達員は、外から見ると単純な仕事に見えると思う。

鳴った注文を受けて、店で商品を受け取って、お客様に届ける。やることはそれだけだ。

でも、その「それだけ」をやり切るには、細かいことがたくさんあった。

以前、宅配ピザのドライバーをバイトで経験していた。商品を運んで、お客様に渡す。その部分は、初めてではなかった。

それでも、慣れたと感じるまでには時間がかかった。

この記事に書くのは、効率よく稼ぐ方法ではない。効率を考えられるようになるまでに、僕が何をやっていたかという話だ。

慣れるまでに、僕は約2ヶ月かかった

宅配ピザの経験があったので、手渡しなら戸惑うことはなかった。

ただ、僕がやっていた頃の宅配ピザには、置き配という仕組みがなかった。玄関の前に置いて、写真を撮る。お客様に届けるという部分は同じでも、そのやり方は新しく覚え直すことになった。

新しく覚える必要があったのは、三つだった。

一つは、アプリの操作だ。注文を受けて、店に着いたことを伝えて、商品を受け取って、配達を完了する。一連の流れをアプリの上で進めていくので、まずここを覚えないと何も始まらなかった。

二つ目は、店舗だ。宅配ピザのときは自分の働いていた店から出発していたから、いろいろなお店に商品を受け取りにいくという行為そのものが初めてだった。

三つ目は、道だ。バイトをしていた地域とは違う場所で走ることになったので、道は一から覚え直しで、土地勘も養う必要があった。

そして、それ以前のところでつまずいた。体力だ。

最初の1ヶ月は、アシストなしの自転車で稼働していた。しんどくて、慣れるどころではなかった。店舗の傾向を覚えるとか、道を覚えるとか、そういうことを考える余裕がなかった。走って、届けて、疲れて帰る。それの繰り返しだった。

2ヶ月目に入る日に、中古の電動アシスト自転車を買った。

これで自転車に乗るのが楽しくなり、たくさん走るようになった。走れば走るほど、いろいろな店舗に受け取りに行くことになる。その経験が積み上がって、気づいたら慣れていた。

3月4.3万→4月22万。フードデリバリーの売上を約5倍にした、中古の電動アシスト自転車

僕が「慣れた」と感じたのは、ある程度道を覚えて、配達が安定したと思えた頃だった。始めてから、約2ヶ月が経っていた。

ただ、慣れたというのは、完璧にできるようになったという意味ではない。3年経った今でも失敗する。

この約2ヶ月という数字も、僕の場合の話だ。宅配ピザの経験があってこれなので、まったくの未経験ならもっとかかっても不思議ではないと思う。逆に、もっと早く慣れる人もいると思う。

最初の5ヶ月、数字はこう動いた

慣れていく過程は、数字にも残っていた。

出前館を始めたのはその年の8月なので、最初の5ヶ月はUberだけで走っている。条件が揃っているので、そのまま比較できる。

見たいのは総額ではなく効率のほうだ。1時間あたりでどう変わったか。

件数で比べても、1件ごとに距離も報酬も違う。時間あたりで見たほうが、効率が上がったのかどうかは分かりやすいと思う。

1時間あたりの売上は、約1,081円、約1,226円、約1,468円、約1,584円、約1,584円と動いた。5ヶ月で約1.5倍だ。

ただ、時給が上がった理由は、途中で変わっている。

最初の3ヶ月で上がったのは、1件あたりの単価だった。約354円から約495円へ。この間、1時間あたりの配達件数はほとんど増えていない。

理由を一つに絞ることはできない。ただ、当時の仕組みが絡んでいた可能性はあると思っている。

具体的な条件は分からないが、2週間ほど稼働したあたりで、クエストが出るようになった。それとは別に、30件ほど配達すると現金配達ができるようになる仕組みもあった。現金配達のほうが報酬が良いように感じていたが、これは根拠のある話ではなく、当時の僕の印象でしかない。最近は、現金配達だから報酬が高いとはあまり感じない。

どちらも、始めたばかりの頃には手が届かないものだ。

そう考えると、最初の1ヶ月の時給が低かったのは、僕が遅かったからだけではなかったのかもしれない。そもそも、単価が上がる条件を満たしていなかった。

Uberのクエストとは? 仕組みと、3つのリスクを解説

4ヶ月目からは、逆になった。

単価は約500円前後で止まり、代わりに1時間あたりの件数が増えはじめた。それで時給が押し上がっている。

数字に出てきたのは、慣れたと感じたよりも後だった。

店舗に慣れるまで

普通の店舗で戸惑ったことは、ほとんどなかった。入って、名乗って、注文番号を伝えて、商品を受け取る。それで終わる。

困ったのは、二種類の店だった。

一つは、バーチャルレストランと呼ばれる形態の店で受け取るときだ。僕が困ったのは、アプリに表示されている店名を頼りに現地へ行っても、その名前の店が見当たらない、という場面だった。

始めてまもない頃、これを知らずに配達を受けた。地図が示す場所に着いたのに、看板にその名前がない。周りを歩き回っても見つからない。同じ場所を何度も往復した。

結局、店舗に電話をしてたどり着いた。

走っているうちに、この形態には二つのパターンがあると分かってきた。

  • パターン1:実店舗で飲食店を営んでいて、それとは別の店名でも出しているところ。
    店そのものはあるので、行けば建物は見つかる。ただ看板に出ている名前が違うので、知らないと通り過ぎる。
  • パターン2:お客様が入る実店舗を持たず、調理場だけがあるところ。
    看板が出ていないこともある。地図の場所に着いても、それらしいものが見当たらない。

知らなければ、僕のように歩き回ることになる。経験してみないと分からないことだった。

もう一つは、商業施設の中にある店舗だ。

施設によっては、配達員は従業員用の入口から入ることになっている。入館の手続きが必要な場合もある。地図の上では到着しているのに、そこからが長い。

これも、一度経験すれば次からは戸惑わない。

どちらの場合も、店舗の詳細に説明が書かれていることがある。入口の場所や、受け取り方のメモだ。

ただ、書かれていないこともある。

結局、行ってみないと分からない部分が残る。

店舗に慣れるというのは、こういうことの積み重ねだと思う。商品が早く出る店、待たされる店、受け取り口が分かりにくい店。回数を重ねるうちに、地図とは別の情報が頭の中に蓄積されていく。

その情報は、誰かに教えてもらえるものではなかった。自分で走って集めるしかなかった。

道を覚えると、移動が変わる

ナビは便利だが、万能ではない。

ナビ通りに進んだら大回りだった、ということがある。自転車なら通れる細い道を、ナビが拾わないことがあるからだと思う。

ナビ通りに行ったら階段だった、ということもあった。自転車を押して通るか、引き返して迂回するか。どちらにしても時間が余計にかかる。

だから、道は自分で覚えることも必要になる。

とはいえ、稼働エリアの全部の道を覚えるのは無理だ。僕も覚えていない。

僕がやったのは、ざっくり覚えることだった。

このエリアからこのエリアに行くなら、この道を使う。まずはその程度でいい。大きな道の骨格だけを頭に入れる。

それができたら、少しずつ細かくしていく。この交差点は信号が長いから一本ずらす。この坂は避けたほうが楽だ。そうやって、骨格に肉をつけていく。

最初から全部を覚えようとすると、たぶん続かない。ざっくりから始めて、徐々に詳細にしていく。この順番のほうが、僕には合っていた。

それでも、最初はやらかした

ここまで、慣れるまでにやってきたことを書いた。ただ、慣れる過程では失敗もした。

まず、さっきのバーチャルレストランを探し回っていたときのことだ。

見つからないまま焦って、関係のない店に入って「Uberです、◯◯って、ここで合ってますか」と聞いてしまった。今思えば、聞かれたほうも困っただろうと思う。

それから、置き配を間違えた話だ。こちらのほうが、実害のある失敗だった。

配達先の情報には、簡易的な表示と、詳しい表示がある。このとき、二つに書かれている建物名が違っていた。僕は簡易表示のほうだけを見て、そちらの建物に置き配をした。

しばらくして、お客様から連絡が来た。届いていない、と。

置いた場所は覚えていたので、すぐに戻って商品を回収し、正しい住所に置き直した。

確認を怠った僕のミスだ。

失敗はこれだけではなく、細かいものも含めればたくさんある。

失敗するたびに、次からは気をつけるようになる。そうやって少しずつ覚えていった。

3年経っても、間違えることはある

3年やっている今も、失敗はする。

例えば、建物の取り違えだ。

同じ建物名で、後ろに1と2が付いているだけの建物が、隣同士に並んでいることがある。慣れているエリアだと、確認せずに動いてしまう。それで違うほうのインターホンを押す。

その場で気づけば、謝って隣に移るだけで済む。それでも、押されたほうからすれば迷惑な話だと思う。

これは、前の章に書いた置き配の失敗と同じ種類のミスだ。

どちらも、建物を取り違えている。どちらも、確認を怠ってしまった。

3年やっても、同じような失敗をすることはある。いつもは気をつけているが、疲れていたり集中力が切れているときは、特に起きやすい。

慣れたことで、逆に間違えやすくなることもある。だから、間違えないように常に気をつけておく必要がある。

慣れても、そこで終わりにはならない。続けている限り、この繰り返しなのだと思う。

続けることそのものについては、別の記事で書いた。

「やる気が出たら」では動けない ― フードデリバリーを3年続けてわかったこと

3年で変わったのは、走る速さではなかった

最後に、今の数字も出しておく。

3年経った現在、1時間あたりの売上は約2,215円になった。始めた月が約1,081円だったので、約2倍だ。

この差は、積むと形になる。

今年の上半期は、約840時間走った。同じ時間を始めた頃の時給で走っていたら約91万円。今の時給なら約186万円だ。差は約95万円になる。

ただ、自転車をこぐ速さが上がったわけではない。

変わったのは、1件あたりの無駄な時間だ。店の特性が分かっていれば、待ち方が変わる。道を覚えていれば、遠回りをしない。ここまで書いてきたことは、そのまま時間の削り方の話でもあった。

もう一つは、稼働の形だ。始めた頃はUberだけだった。そこから出前館を始め、Rocket Nowも試した。今は3社を掛け持ちして、一つが鳴らない時間に別のところから鳴るようにしている。単価の傾向もそれぞれ違うので、その日の状況で寄せ方を変える。

3年かけてやってきたのは、自分に合う形を探すことだった。その結果が、時間あたりの売上として出ている。

もちろん、僕の工夫だけの話ではない。プラットフォームの構成が変わったことも、報酬の仕組みが変わったことも混ざっている。条件そのものも違う。始めた頃のUberは単価が低いかわりに、長い距離の配達は少なかった。今は出前館がメインで、単価は高いかわりに長い距離も多い。同じ1時間でも、中身は同じではない。

それでも、一つだけ言えることがある。

最初の5ヶ月に起きたことと、3年間に起きたことは、同じ形をしていた。どちらも、走る速さが上がったからではなかった。

効率化というのは、無駄な部分を無くすことだったり、自分に合う形を見つけることだったりするのだと思う。

これから始める人へ

最初から効率よくやろうとしないほうがいい、と思う。

効率を考えるには、まず一連の流れに慣れる必要がある。僕の場合、そこまでに約2ヶ月かかった。その前に効率の話をしても、たぶん頭に入らなかった。

それに、始めたばかりの頃は、そもそも条件が揃っていないこともある。

全部を完璧にできなくても、落ち込まなくていい。3年やっている僕でも、建物を間違える。

そして、他の人の稼働報告は参考程度にとどめたほうがいいと思う。

僕自身、Xに毎日の稼働実績を投稿している。だからこれを書くのは、少し妙な感じもする。それでも書いておきたい。

稼働するエリアが違えば、鳴り方も単価も変わる。稼働できる時間帯が違えば、結果も変わる。同じ数字にならないのは、能力の差だけが理由ではない。

誰かの数字を目標にするのはいいと思う。ただ、届かなかったからといって落ち込む必要はない。条件が違う。

比べるなら、過去の自分と比べたほうがいい。

先週より少し早く着けるようになった。先月より店舗で迷わなくなった。そういう変化は、他人の数字と並べても見えない。自分の中でしか測れない。

僕もそうやってきた。3年かけて、走る速さは変わらなかった。それでも、時給は倍になった。

自分のペースで、徐々に効率化していけばいい。

僕も、どうすればもっと良くなるかを考えながら、これからも走っていく。

複利の奴隷から、成り上がるまで。

コメント

タイトルとURLをコピーしました